すぐそばで聞こえた声は、俺が考えていることを、


いつもなぜか知っている涼太だった。


…俺、声に出てた?



涼太はニヤニヤしながら、こちらをじーっと見つめている。



その眼差しは、やっぱり全てを見透かされているように見えて、


俺はふぃっと目を逸らした。


…オカン恐るべし



「…けーちゃん」



…え?



茶化されるのかと思ったのに、優しい声で俺の名前を呼ぶから、


思わず視線を涼太に戻した。



涼太は安心したように、眉を下げて微笑んだ。




「もう、大丈夫だね」




目を細めた時、頬をスーッと伝った涙は、



見とれるくらいに綺麗だった。




…涼太が泣いてるところ…初めて見た




「……人を、好きになれてよかった…」



そう言いながら涼太は、俺の髪をわしゃわしゃと撫でる。


…ほんとそれ、好きだな



まぁ俺も……嫌いじゃないけど



「…こんな時にまでオカンかよ」


照れ隠しにそんなことを言ってみる。