お母さんのその言葉を聞いて、ららは安心したように表情が柔らかくなった。
「うんっ」
そう嬉しそうに返事をするららは、とても可愛い。
小さくて、ふわふわしてて…
「…抱きしめたい…」
この感情を、なんと呼ぶのだろうか。
俺には分からない、知らない。
『…好きじゃないなら、思わせ振りなことはすんなよ』
いつかの日、涼太は俺にそう言った。
…ららのことを、嫌いなわけがない
情けなくて、よく泣いて、一生懸命な…
…そんなららが…俺は…
「…誰を抱きしめたいって?」
誰も聞いていないと思っていた俺の呟きは、しっかりと涼太の耳に届いていた。
慌てて涼太の方を向くと、涼太はニヤニヤした顔で俺を見ていた。
「お前を」
俺はふざけて涼太を強くぎゅっと抱きしめる。
「いででっっ」
…うわ~…まじ最悪…
聞かれるとか…最悪…
てゆうか声に出てたことに、気づかない俺って…やばいよな…
「げーちゃんっは、はなして~」
「あ、ごめんごめん」
「俺の愛は深いから」
俺が真顔でそう言うと、涼太は怪訝そうな顔で言った。
「…けーちゃんってそんなこと言うキャラだっけ…」
俺は何も言わずに、涼太の横をスッと通りすぎた。
…あーぁ…自分の気持ちが一番わかんねぇな…
でもこれも、いつかはいい思い出だって話せる日が来るのだろうか。
…そんな日が来るといい
柄じゃない言葉を心の中で呟いて、俺はリビングに入った。



