お母さん、ごめんなさい
いくらそう心の中で謝ったって、お母さんには届かないのに。
「…らら?」
心配そうなお母さんの声に、私はハッとした。
「な、なに?」
…ぼーっとしてた
「たまごやき、涼太くん美味しいって、ららも食べてみて」
お母さんは嬉しそうに笑う。
その度に、私の胸はチクリと痛む。
苦しい、辛い
もう、嘘なんてつきたくないよ
でもお母さんにあきれられるのも嫌だ
…心が……痛い
「…思い出、たくさん作ろう」
耳元でそう囁かれた声は、聞き慣れた蛍くんの声だった。
蛍くんと視線が合った時、胸がドキッと高鳴った。
すごく無邪気に、笑っていたから。
蛍くんを見ていると、いつのまにか変な胸のざわざわは消えていった。
…そっ…か…
…そうですよね
せっかく3人で初めてお出かけするのに、これじゃもったいないですよね。
空っぽだった部分を、蛍くんと涼太との思い出でいっぱいにしたい。
「はいっ」
隣で笑う蛍くんと、たまごやきを美味しそうに頬張る涼太くんを見ながら、私も自然と微笑んでいた。
「このたまごやき、めっちゃ美味しいです!」
涼太くんが、お母さんにキラキラとした視線を向けてそう言った。
「…だろ?」
「なんでけーちゃんが作ったみたいにドヤ顔なの?!」
楽しそうに会話をしている二人に近づいて、私も一緒にたまごやきを頬張った。



