突然ららの話題を出され、なぜか体にグッと力が入った。
けれどすぐにふっと力が抜けたように落ち着いた俺は、静かに言った。
「…多分」
俺達の担任である眠ちゃんは、当然ららの担任でもあるわけで、不登校のことを知っているのは当たり前。
「…そっか…」
眠ちゃんのそんなそっけない返事が聞こえた後、また少しの沈黙が流れた。
少しの沈黙の後、呟くように眠ちゃんは言った。
「…永瀬、」
「…桜田のそばにいてくれてありがとう」
……なん…だそれ…
声だけで分かる。
確かに先生の声は、少し震えていた。
…だから俺は…
ららのお母さんの言葉が頭をよぎる。
_『蛍くんのおかげで…ららがよく笑うようになったの』
…俺はっ…
「俺はまだ…あいつに何もしてやれてない」
「はやくしないと…あいつ…このままずっと…学校行けねぇまま…」
気がつけばそんなことを口にしていた。
そして俺の声も、確かに震えていた。
…学校に行けないまま、“高校生が終わってしまう”
こんなに楽しくて、人生で最後の子供でいられる時間を、あいつは……
『っ…学校に行ってっ…』
『…皆と…笑いたいですっ……』
…こんな小さな夢だけ残して…
「なーにいってんだ」
_カチッ
ペンのキャップが閉まる音がした後、耳にしっかりと届いた眠ちゃんの言葉は、
「お前がいるから、桜田はまだ学校へ行く希望を、捨てなかったんだ」
…真っ直ぐで、飾らない言葉だった
「先生じゃない、同じ学年の、同じクラスの“クラスメイト”の永瀬に、」
「桜田は心を救われたんだよ」



