「灯りちゃんには棒のアメあげよーっと」
……じゃぁ俺は…
俺は眠ちゃんの姿を頭に思い浮かべる。
…珈琲(コーヒー)とか好きそうな顔してんな……
「じゃぁ俺は…珈琲…」
俺は飲めねぇけど…
…あれすっげぇ、苦い…
俺は自分で口にしたのにもかかわらず、味を想像してしまい、
口の中に広がる苦い珈琲を、思い出してしまった。
珈琲を初めて飲んだのは、中学生の時だった。
あの時、涼太があまりにも美味しそうに飲むから、
少し飲んでみたくなったんだっけ…
『…涼太、それ美味しいの?』
俺は涼太が飲んでいるものを指差すと、そう言った。
涼太はふっと笑った後、俺にそれを差し出しながら言った。
『飲んでみる?』
俺はなんだか興味が湧いてしまい、珈琲を受けとると、鼻に近づけて匂いを嗅いでみる。
……苦い匂い…
『ははっ…その顔おもしろいっ』
俺のしかめっ面を見て、ゲラゲラと笑う涼太をムッとした顔で見つめた後、
俺は珈琲をゆっくりと口に近づけた。
口の中に入れると、広がる変な苦み。
……うわ…
_ゴクン
『あはははっ…あはっ…すごい嫌な顔してんねっ』
涼太は俺を見て、面白そうに眉を下げて笑う。
……なんでこんなん平気で飲めんの…
『……すげぇまずい…』
俺は口の中にまだ残っている、変な苦みを早く消したくて、口をパクパクと動かす。
『…あははっ…魚みたい』
涼太は俺を見て楽しそうに笑いながら、ポケットからアメを出すと、
俺の口の中にカコッと入れた。
……甘い…
『…あいがほう』
俺は口の中に広がる、甘いアメのおかげで珈琲の苦みを消すことができて、ホッとする。
俺が感謝を伝えると、涼太は笑いを堪えながら言った。
『うんっ…言えてないけどねっ…』
…懐かしいな…
「…もう二度と飲まない…」
…大人になったら飲めるとか、聞いたことあるけど、
俺はぜってぇ飲まねーからな……
あいつに苦しめられたことは一生忘れない……
「…ちゃん」
…ん?



