…さっき早退したっつってたのに


すると涼太は、俺の顔を一瞬だけチラッと見てから、またふいっと目を逸らして言った。


「……お腹すいたね」


どこか遠くを見つめて、感情のない瞳でそう言う涼太に、俺はすかさずツッコミを入れる。



「おい、現実逃避すんな」



…確かに腹へったけど…


…そういえば昼ごはん食ってねぇな



「……う~ん…」


涼太は、お腹がすきすぎて現実逃避しているのか、


何かを考えているのか分からないけれど、涼太のことだからきっと後者だろう。



「てか今…何時間目だよ……」


俺はポケットからケータイを取り出すと、画面をパッと開く。



開いた画面を見た瞬間、少しの間、俺の思考は停止した……


…けどすぐに正気に戻ると、俺は涼太に向けて呟いた。



「……もう学校…終わるわ…」


たぶん今の俺は、すごくアホ面だと思う。


涼太は眉を下げて言った。



「……だろうね」



涼太はコテッと首を傾げて、思いついたように口を開いた。



「……とりあえず、眠ちゃんのとこ行かない?」


…眠ちゃんのとこ…?


「……別にいいけど…なんで?」


俺がそう問いかけると、涼太はなぜかとても機嫌が良さそうに言った。




「感謝を伝えに行くんだよ」



…感謝…



「コンビニ寄って行こう!」


涼太はそう言うと、さっきよりも少し早足で歩く。



「…お昼ご飯?」


俺は涼太の後ろを追いかけて、隣に並ぶと、そう問いかけた。


すると涼太は、お腹をさすりながら情けない声で言った。



「そうだよ、もうお昼じゃないけどね…お腹ペコペコ……」


俺も結構ペコペコかも…



「からあげ買う」


お腹すいてても、すいてなくても


…どんな時も、からあげは美味い