俺がそう言うと、涼太はピタリと立ち止まって、口を開けたまぬけな顔でこちらを向いた。



……なにその顔



「……?」


俺は不思議に思い、じっと涼太が何か話すのを待っていた。



「…いこっかって言ったけど……」


「……うん?」


……どうせ、学校抜け出して来たんだろ?



「…俺、言い忘れてたけど早退してきたんだよ」



………



「………は?」


「……いや、どうやって?」


先生達はよっぽどのことがない限り、生徒を早退させることはないだろう。



ましてや、友達に会いたいから、という理由で早退できるほど、うちの学校も甘くはない。



「体育の後ホームルームで、けーちゃんとのこと灯りちゃんに話したら、行ってこいって」


涼太は嬉しそうな顔で、そう言った。



「………まじか」


……あかりちゃんに感謝だな…



……ん?



「……いや、あかりちゃんって誰?!」


聞いたことないんですけど?!


…俺らの担任、確か男だった…よな?



俺が少しパニックになっていると、涼太は笑いながら言った。



「俺らの担任じゃん」


「…あぁ、眠ちゃんか」


そうだよな、俺らの担任は眠ちゃんだよな。



「そうそう、眠夜(ねむりや)先生」


……眠夜…あかり……



「………ふ~ん……って……」


「……眠ちゃんって下の名前…あかりっていうの?」



………知らんかったぞ俺…


俺が驚いてそう問いかけると、涼太は当たり前のように言った。



「そうそう、可愛いよね~」