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「…珍しく静かだな」
二人で久しぶりに歩く通学路で、俺は空を見上げている涼太にそう言った。
「……うん…」
涼太は空を見上げたまま、多分なんとなくそう返事をした。
横目で涼太を見てから、俺も空へと視線を向けた。
二人で通学路を歩くのはいつぶりだろう。
…俺が…
…ある日急に…これから一人で行くって言った日以来か…
ららに出会ってから、俺は理由も言わず、しかも“一人で行く”と嘘をついていた。
ららが不登校だということを、誰にもばらしたくなかった。
…たとえ、涼太だとしても。
中学の時から朝は毎日、一緒に通学路を歩いた。
約束したわけでもなく、ただ涼太が迎えに来てくれて、バカみたいに笑いながら、おはようって言ってくれた。
…その時間は…多分……とても大切で……
「……ごめん…」
…今まで黙ってたこと
…嘘をついていたこと
涼太が最近なんとなく苛々しているのは分かってる。
でも理由は分からない。
この前も、怒ってないっていいながら、何か言いたげだった。
その積み重ねで、俺までも苛々してしまっているのは、正直どうしてなのかそれもよく分からない。
俺が謝っても涼太は何も言わず、
ただ空を眺めていた。
少しの沈黙の後、涼太はいつもより少し低い声で言った。
「……何に謝ってんの?」
俺が涼太へと視線を向けると、涼太は怒りではなく、
とても、ひどく寂しそうな顔をしていた。
……何にって……
「…ららのこととか…いろいろ……分かるだろ…」
__言わなくても分かるだろう。
それは、その人のことを信頼している証なのかもしれない。
_でもそれは時に
「…分かんないよ」
__すれ違いに変わってしまうのだと
「…謝られたって…自分が惨めになるだけだ…」
俺はこの時、思った。