後ろから伝わってくる優しい言葉。


俺は少し驚いて、もう一度ららのお母さんの方へ向いた。



視線が合うと、ららのお母さんが笑っていることに気がついた。



それは、とても幸せそうな顔。


…笑った顔…親子そっくりだな…


それに…ありがとう…なんて…



「…いえ…俺は何も…」


俺は何も…



_してあげられてないのに



「蛍くんのおかげで…」



「…ららがよく笑うようになったの」



その言葉を聞いて、頭に浮かんだのはららが言った言葉だった。



_『…生きてて良かったって…そう思えるようになったんですっ…』



……そっか…


俺と出会って、ららがよく笑うように…



「……よかったです」


俺は自然と笑って、そう返事をしていた。


「…あっ…止めてごめんねっ…いってらっしゃい~」


ららのお母さんはハッとしたようにそう言うと、


「気をつけてね」と少し心配そうな顔をした。


…なんか…懐かしい感覚だな…



「…いってきます」



俺はもう一度、背を向けると、ダッと走り出した。



ららの気持ちが今、少しだけど分かったような気がする。


ららのお母さんの疑わない瞳。



『いってらっしゃい』って言ってくれる、優しい笑顔。



_きっと苦しい


大切な人に嘘をつくのも、嘘をつかれるのも


今は知らなくても、いつか知ってましった時、すごく悲しむんだろうな…


…そんな顔…してほしくない…


俺が…



…ららを迎えに行く_