次の日、いつもより少し早く出勤して、相澤が来るのを待ち伏せた。

いつも通りの時間に出勤してきた相澤の元に駆け寄って声を掛けると、相澤は明らかに不機嫌だった。


「おはよ、相澤、」

「天野、俺昨日言ったじゃん、しばらく話したくないって」

「で、でも、このままじゃ嫌だから、」

「……」

「わたしなにか相澤を怒らせるようなことしたんだよね?ごめん」

「……」

「わたしにとって相澤は大切な友達で、こんなことで気まずくなったりしたくないんだよ。だから、お願いだからこんなのやめよ?…お願い、相澤…」


わたしの〝お願い〟という言葉に、相澤が弱いということを、わたしは知っている。


「……ごめん天野。今回ばかりは無理だ」


どんな無茶なことも〝お願い〟と言えば相澤は折れてくれた。

けれど今回はそうもいかないみたいだ。


わたしの目を決して見ようとはしない相澤を前にして、今この状況がいかに深刻で、絶望的かということを、わたしは愕然として痛感したんだ。