朝寝坊をして朝ごはんも食べられぬまま、ほぼすっぴんという悲惨な状態で出勤した。わたしの作った資料にミスが見つかり、先輩社員にこっぴどく叱られる。資料の作り直しに追われ、会社を出たのは定時を大幅に過ぎた夜7時過ぎ。

会社を出てすぐに、空からはぱらぱらと雨が降ってきた。

びしょ濡れで駅のホームを歩いていると、中学校時代の親友に声をかけられた、というわけだ。


「リオも残業だったの?」
「うん。お互いお疲れだね」


そう言ったかつての親友は、びしょ濡れでぼろぼろのわたしとは正反対で、サラサラの長い髪とおしゃれな洋服に身を包んで、とても綺麗に笑った。

「どこで働いてるの?」と聞くと、誰もが知る超有名な一流証券会社の名前が返ってきた。びっくりしたけれど、考えてみれば妥当だった。一流の私大に入学した彼女のことだ。入れない企業なんてないだろう。

わたしなんて、就職活動を3か月死に物狂いで続けて、やっと一社、今の会社に内定を頂けたというのに。


とてもよくできた親友と自分とを、無意識に比べて自己嫌悪に陥る。これだから会いたくないのだ。かつての友人には。