友達すぐ来るんで〜、と笑って、やんわりと彼らと距離を置こうとしたときだった。


「離せよ」


という声がした。そう言ったのはわたしが待ち構えていた零だった。けれどその声は聞いたことがないくらい低く、見たことがないほど怒っている。頭にツノが生えているかのような鬼の形相だ。

あまりに怖くてぞっとするが、男の子2人組はそんな零の様子も気に留めず、呑気に言葉を続ける。


「このちんちくりん、お姉さんの友達?」
「こんなガキより俺たちと遊ぼうよ〜」


なにを言ってんだ、この人たち。気持ち悪いだけならまだしも、零のことを悪くいうのはさすがに許せない。ふつふつと怒りがこみ上げる。一言、言わないと気が済まない。


「ちょっと、零のことバカにすんのやめ…」


しかしわたしが言い切る前に、とても強い力で零の方に引っ張られ、男の子から引き剥がされた。

零は「次、俺の言葉を無視したらもう次はないぞ。分かったらどっか行け」と冷たく言い放った。


男の子2人組は、零の並々ならぬ雰囲気にさすがに圧倒されたようだ。そそくさと私たちから姿を消していった。それを見届けてから零に向き直ると、いつも通りの零に戻っていてほっと息をつく。