【医、命、遺、維、居】場所

だから、だからね・・・。




重ねた手に少し力を込めて。



目を向けた先の巧は、少し緊張した顔をしていて。











「叔母さんも杏梨も、巧のせいじゃない。」










ほんの数秒で
あっけなく吹き飛んでしまうような
選択肢が迫られてしまう世界



否応なく手招かれる終わりが訪れても。









「巧がいてくれてよかった。巧と杏梨といられてよかった。」








たとえ目が見えなくても、
たとえ耳が聞こえなくても、
たとえ手足が無くても、


たとえがたとえじゃなくなっても。





巧の手から伝わる
この体温が、
この鼓動が、


私の支えになっていて、
私がここにいていいって、


そんな意味を成しているんだと思えるから。









「叔母さんや杏梨の担当医が、巧でよかった。」







遥じゃ、甘えきって逃げてしまったと思う。




他の医者じゃ、頼れずに根をつめすぎてしまっていたと思う。







巧だからこそ、私は叔母さんや杏梨のことに、こんなにも向き合えていたんだと思うんだよ。










だから、だからね・・・。







「ありがとう。」










楽しかったのも、嬉しかったのも、


悲しかったのも、苦しかったのも、





巧だったから。


巧とだったから。





ぜんぶぜんぶ、巧がいてくれたから。





巧でよかったんだと伝わるように。











「巧、ありがとう。」












巧の存在と優しすぎる性格に、精一杯の感謝を込めて。