【医、命、遺、維、居】場所

「(いた。)」






弦沓さんの言う通り、海岸の砂浜にある大きな流木の上に座って月を見上げていた。




約曲院長が巧を呼んだことと弦沓さんの言い合いの内容を総合して、弦沓さんが何かしら患っていると察しがつく。



といっても、詳しい病名を聞いた訳でもないし、なんて声をかけたらいいかも分からない。




月並みの言葉ならいくらでもあるけれど、巧に届くとは思わない。




だから。






「っ・・!!」







握り締められた拳に手を重ねる。




巧が息を飲むのが分かった。






背中合わせとはいかないまでも、あの非常階段の時のように、泣き顔なんて見られたくないだろうから。




遥みたいに、言葉じゃ上手く伝えられそうにないから。






私はここにいる、気が済むまでずっと傍にいる。



だから、どんな感情を見せても大丈夫。




体温が溶け合うように、そんな風に感じてくれたら。