【医、命、遺、維、居】場所

「会わせて、やりたかったっ・・・!!」






その言葉を聞いた時、正直私にとっては大したことない事だと気付いた。















・・・・・・遡ること数時間前。


最後の子の手術を終えて、産婦人科に顔を出そうと向かっている途中。




非常階段へ向かう巧と、それを追いかける遥が見えた。






稔さんとの事の顛末は看護師から聞いたけれど、杏梨のことは話したいと思っていたから丁度いいかなって私も後を追った。







そしたら、まさかの展開。




出入口の死角まで来て聞こえてきた会話に立ち止まってしまい、盗み聞き状態になってしまった。





確かに、巧が叔母さんや杏梨のことに罪悪感を持ってしまっていたのは分かっている。




けど、それを忘れろとか巧のせいじゃないとか言っても、そんなもので罪悪感が無くなるなんて到底無理な話。




それに、叔母さんのヘビースモーカーぶりを電話口とはいえ、 完全に止めきれなかったのは私にも責任があるし。







だから、巧自身が表に出さず隠しておくなら、それこそが巧の優しさと罪悪感に対する責任の取り方であるならば、と私は杏梨を任せたいと思った。








・・・違うなー。


巧だったらいいなって思っちゃったんだよね。


優しさにつけこんだ形になっちゃったから、
巧が笑えなくなってしまっているなら、
私が笑いたいなって。




叔母さんが好きだと言ってくれた笑顔で道化師(ピエロ)になった。




笑い続けていれば、心の中で泣いているであろう巧だって、いつかきっと再び笑ってくれると信じたかったから。





って、結局自己満足でしかないんだろうけどね。