【医、命、遺、維、居】場所

「分かってるよ。」




「分か、ってないだろ。諭すよ、なしゃべり、方しやがって。」







「元々だよ。」






「お、れはっ・・・!我慢なん、かしてない。泣きたくもないし、泣い、てもいない。・・家族、だって色んな、形があることも、分かって、んだよ・・・!」





「うん。」







十月十日、自らの身体の一部となっても、



命懸けで産んだとしても、



健康児であっても、



愛情が湧かないことはあるにはある。







管が繋がれた状態でも、



生きていなくても、



障害が残ってしまっても、



愛情溢れることだってたくさん見てきた。









「だから、稔さ、んが、『父親』に、なれなくても、俺はいい、と思う。」







「うん。」







それでも・・・・







「それでもっ・・・!きて、欲しかったなぁ・・・・!一目でいいから・・!」









生きているうちに。





俺の自己満足かもしれないけど。




杏梨ちゃんも稔さんも、望んでいないかもしれなかったけど。







「会わせて、やりたかったっ・・・!!」








手遅れに消えた願望。




幾年分の涙が流れたのは、決して遥に言われたからじゃない。





無影灯の様な夜景が綺麗だったから、という理由にしたい。





だけど。





冷めきったミルクココアを飲む気になったのだけは、遥のおかげかもしれない。













【巧side end】