【医、命、遺、維、居】場所

6年前を思い出したら『杏梨ちゃんに会いに来て欲しいと稔さんに言っても良いだろうか?』と、このヘラ顔に俺の願望を尋ねてみるのもいいんじゃないかと思って。









「・・・なあ、はる」




「樫岡先生っ!!」






問いかけたかったのに。




遮って俺を呼んだ看護師の担当の科は、産婦人科ではなく小児科だ。












「どうしました?」





「杏梨ちゃんが、急変して・・・!」







『杏梨ちゃん』『急変』の言葉に、遥と顔を見合わせる。







言葉が続いてくれなかったおかげで、直感的に結論が分かってしまった。



黙った方が、伝わることだってある。








「それで?」






分かりきっていても、先を遥が促す。









「・・・傅雖先生が駆け付けた時にはもう・・・。それと傅雖先生は今、手術中で・・・。ただ、書類は全て預かっています。ご家族へも連絡して、もうすぐ着く頃かと。」






「分かりました。・・書類、もらえますか?ご家族への説明は、俺がします。」




「・・はい、お願いします。」








言葉につまりながらも報告してくれる看護師は、杏梨ちゃんを担当していた一人だから無理もない。







「遥」



「後は任せて。そっちは頼むよ。」




「・・ああ。」






こういう時、付き合いが長いと助かる。





おそらく罵倒も殴られることもないだろう。



けれど、あの絶望にも虚無にも似た表情で語られる言葉を、受け止めなければならないのは他でもない俺だから。



俺でなければならない。