美容整形内科 林田

噂とは本当に怖いもので、翌日にはほぼ全員に“フラれた女”というレッテルを貼られたように思う。


毎日ランチを一緒に食べていた同僚の女の子も。
嫌味ばかりのおばさん上司も。
私がいじめたというあの後輩も。
……古溝さんも。


まるで私を避けるような態度だった。

そこで気づいたんだ。
古溝さんの言うことに間違いはない。

私が古溝さんに申し込んだお付き合いも、みんなが私を囲むように生活していたあの時間も、一緒だ。

自分の立場を上げるため、だったんだ。



私は1ヶ月、避け続けられる職場と戦った。
それでもいきなりいい子になんてなれる訳もなく、ついに爆発して言ってしまったんだ。



「なんだよ!!
みんなしていきなり態度変えやがって!
私が何をしたっていうの?」

冷たい視線が集まる。
こんなはずじゃないのに。



小学生の頃からずっと人気者だった可愛い私が、一人ぼっちだなんて、耐えられなかったんだ。


それから7日間、死んだようにベッドから出なかった。


実家住みの私だけれど、家にも慰めてくれる人はいなかった。


「ポストにこんなのが入っててびっくりしたよ、はい」


そう白々しく言うママの手には“解雇”と書かれた封筒。
……慰めてくれるどころか、心配すらされない。



かつて仲良かった友達も、元彼も、きっとみんなの反応は、ママと一緒だ。

みんなが私と一緒にいた理由に、気づいてしまったから。
みんな、私欲のために近づいたと、気づいてしまったから。

だから頼れない。



窓の外は、雨だろう。
ベッドに篭もっている間、1度も開けることのなかった遮光カーテン。

薄暗い部屋で、ザー、という忙しない雨音に耳を傾けながら、頭の中で繰り返されるのは古溝さんの言葉だった。