私には好きな子がいた。

いや、正確には、“好きな顔”がいた。


目がぱっちりとしていて
鼻がすっと通っていて
唇が色っぽい


うちの会社で王子様と崇められる、
古溝 悠哉(コミゾ ユウヤ) 26歳


性格なんか一切知らない。
でも大好き。


だって顔がかっこいいんだもん。
王子様、とみんなにチヤホヤされてるんだもん。


彼は恋の噂もある、2個年上の先輩だった。

でも、私には自信があった。


みんなから羨ましがられる綺麗な二重
小鼻がこじんまりとした、それでいて高い鼻
何より自慢なのが左だけの八重歯


この顔で落とせなかった男はいない。
狙った男、全員から告白をさせた経験は変え難い事実であり、私の自信だ。


そんな私が今回、手っ取り早く自分から告白しようというのだ。


本音を言うと、寿退社したい。
ムカつくオバサン上司(独身)に、私の幸せを見せつけたい。


ただそれだけの理由だ。



「あ、もしもし?
別れよう。
明日部屋に置きっぱなしの私のモノ取りに行くから、鍵空けておいてね」


付き合って3ヶ月、そろそろ飽きちゃったの。
これから古溝さんと付き合うの。
浮気をするほど悪い女じゃないの。

だからごめんね。



許してね。


私は元カレとなった彼の電話番号を、消した。