こうしてサッコに付き合わされるのはもう3回目だ。

同級生たちはどんどんと結婚をし、子供を産んでいる。

そのお知らせハガキが届く度に焦らないと言ったら嘘になる。


だけど、私は私でそれなりに1人生活を楽しんでいるつもりだ。

特に不満はないから、この先ずっと1人でもいいんじゃないかと思いだして来てしまっている。


無駄にメルヘンな鏡と向かい合い、そのやる気のないメイクに溜息が出た。

申し訳程度に透明のグロスを塗り直した。

手を洗い、ハンカチで手を拭きながら廊下へ出る。


その時、ちょうど走ってきていた男性と肩がぶつかり、ハンカチを落としてしまった。


「ごめんなさい」

そう早口で言いながら視線をあげる。
…ユウタさんだ。



少しの間びっくりしていると、笑いながらハンカチを拾ってくれた。



「ねえ、抜け駆けしない?」

千愛ちゃんが気になってたから、追いかけてきちゃった、と笑うユウタさんは、別に悪い人ではなさそうだ。
ちょっとチャラい気がするけれど、そう言われて悪い気になる女はいないだろう。


気になってたから、なんて、そんな言葉も忘れてしまっていたと言っても過言ではないほど、色恋沙汰とは疎遠だった私。

……抜け駆けって?
その定義がよく分からなかった。
合コンの目的は人それぞれ違うけれど、この人の目的は何だろう。


付き合うこと……?
それならいいんだけどもし違かったら……。



まだユウタさんのことを何も知らない私は、彼の笑顔を信じるしか手はなかった。




『ユウタくんと抜けます、カラオケ代は後日請求してね』

サッコは私のための合コンだとか何とか言ってたし、バチが当たる行為ではないと信じて。

ちょっと悪い気はしながらも、やっぱり私は嬉しいみたい。
サッとメッセージを入れると、口角が緩むのを感じた。