鼓膜が破れそうな騒音が響く、薄暗い部屋の中。
ファーストフードの匂いと甘ったるい香水が混じり合い、私の鼻をつつく。
私は画面に一切目もくれず、一途にカリカリポテトを頬張り続けた。
「ちょっと千愛(チナリ)〜、これは君のための合コンなんだゾ」
右隣に座る咲子(サキコ)、通称サッコが不満げに耳打ちしてきた。
正面でマイクを持つ男の子……たしか、ユウタさんと言ったかな。
その声が、それはそれはもう煩くて。
耳元で少し大きめの声を出さないと会話も出来やしない。
私はもともと合コンもカラオケも嫌いだ。
サッコはつい先日6年も付き合った、結婚を考えていた彼氏と別れて絶賛やけ期。
もう暫く彼氏がいない寂しい人間の私は、『千愛に彼氏を』と称された遊びに付き合わされているのだ。
だいたい、いい男もいい女も合コンになんか来ないだろうという持論を持つ私。
それは、27歳になってもこんな場所にいる私にも十分当てはまる。
私はつまんない女であろう、間違いない。
「ちょっとトイレ」
とうとうユウタさんの声に耐えきれなくなって、席を立つことにした。