BrownBoots

年末が近いということもあり、ショッピングモールは人で溢れていた。

みんなが幸せそうな顔をして、暖かなクリスマスソングが流れる店内。


そろそろ、日は暮れただろうか。


「今日も、いっぱい買い物しちゃったな」


そう笑うお父さんは髭をきちんと剃っているし、寝癖もついていない。


昨日、あのおじさんはお父さんが不在だと分かるとすぐに帰って行った。

それから小1時間くらいたった頃、やっとお父さんが帰ってきた。


1人泣く私を、抱きしめて、明日は楽しもうな、と背中をさすってくれた。


なんで遅かったのか、あの男の人は誰なのか。

なんにも教えてくれなかった。


その代わりなのか、今日は私のわがままをなんでも聞いてくれて。

お父さんが両手にぶら下げる袋達は、全部私が欲しいと言ったもの。


手が冷たくなってきたのに。
背の高い人達に埋もれてはぐれてしまいそうなのに。

たくさんの買い物袋で手が塞がれているお父さん。

手が繋げない…。


調子に乗ってあれこれ欲しがったことを強く後悔した。


「そろそろ外も暗くなってきたかな」

腕時計に視線をやる仕草に、何故か心細さを感じだ。

今日が終わってはいけない気がした。


「うん」


私がした小さい返事は、きっと道行く人の会話で、お父さんに届くことなく消えてしまった気がする。


それでも、

「さあ行こうか」

と呼びかけるお父さんの顔は、笑顔だった。


私も、頑張って笑顔を返した。

もう、ブーツにワクワクする心はなくて。

いや。そもそも、心ここに在らず、みたいな。