明日は、待ちに待った日曜日だ。

けれどお父さんは毎日仕事で。
お母さんがいない私は、冬休みのほとんどを、家で一人で過ごしていた。

今日の帰りははやいかなー?

なんて考えているうちに、今すぐにでも出かけたい衝動に駆られ、ブーツを玄関で履いた。

この行為は、クリスマスから毎日の日課になっていた。

何度も繰り返す、その場足踏み。


「コツコツコツコツ」


この音は、女の子ならきっと誰でも憧れる。
まるでランウェイを歩いているみたいだと、腰に手を当てたり、ピースなんかまでしてみたり。


そんなことをしているうちに、玄関の小窓からの光が段々と少なくなっていくのを感じた。


…ソワソワしてくる。


やっとブーツを脱ぎ、リビングの時計に目をやると、冬休みの宿題を片付け終わった時間から5時間はたっていた。

お父さんに、早く自慢したいのに。
もう終わったのか?と褒めてもらいたいのに。

私は待ちくたびれていた。

さっきから腹の虫が泣き止んでくれないし、モデルごっこはもう飽きた。


いつもに増して帰りが遅いお父さんが少し心配で、1人の夜が心細くて。

事故にでもあったのだろうか。


あと1秒で涙が出そうになったその瞬間。


インターホンがなった。


その音に安堵し、どんな文句を言ってやろうかと、今度は不満の感情が湧いてきた。

『なんで遅かったの』
『お腹空いた』
『でも、明日、仲良くお出かけしたいから許してあげる』


そう、言うつもりだったのに。


とびっきりの笑顔で鍵を開けると、そこに居たのは知らないおじさんだった。




そのおじさんは、私から、全てを奪っていく事になる。