「昨日の今日で押し掛けてしまい申し訳ありません」
そう言うなり、1番安くて小さいサイズのホットコーヒーに、1口口つけた相田刑事。
それに習い、私も同じものに口をつけた。
コーヒーの量から考えて、そこまで長引くような話ではないことが想像でき、私の心はまだ軽かった。
だが、話はなかなか本題に入っていかない。
「そういえば今、お昼休憩でしたよね。
ここは私が負担致しますので、どうぞ食べ物もご注文ください」
「あ、大丈夫です。
お弁当作ってきてるので」
気遣いに対して、よくもこんな塩な対応ができるなと、我ながら冷めた心で感心した。
相田さんは申し訳なさそうな表情を一瞬浮かべるも、また1口コーヒーを含んだだけで、しばらく何も言わなかった。
どうしたんだろう。
何か事件で新たに不可解な点でも見つかったというのだろうか。
私は正直、極力捜査に協力だなんてしたくない。
無防備について行った私にも落ち度はある。
だから、あの男に下す刑にこだわりも何もない。
私にかかわらないでくれたら、それで充分。
とうとうしびれを切らした私は、重たい口を開いた。
「今日はどうされ…「すみませんでした」
私の問いかけを遮るように謝罪をされた。
「…へ?」
思わず間抜けな声が漏れる。
なにか謝るようなこと、された?
私の態度か怒っているように見えた可能性は考えられるけど、なんで警察官に対してあたりが強いのかは、相田刑事は分かっていない。
だから、謝るわけがわからない。
混乱していると、相田刑事は衝撃的な事実を口にした。
「…実は、17年前の、お父様の事件の責任者が、私の父なんです」
頭の中で蘇る真白い…いや、暗い情景。
今、この人はなんて言ったの?