真冬日にチラチラと降る雪は全く綺麗ではなかった。
薄暗い世界に降る、ただの塵だった。
そしてそもそもが、私の目には写っていなかった。
「お父さーん!!!」
喉が痛くて痛くて、もう声が出ていなかったかもしれない。
それでも、叫んだ。
大勢の汚い大人に押さえつけられ、前に足が進まないのがもどかしい。
涙なのか鼻水なのか、雪なのか。
顔は水浸しだったが、それにも気づかずに叫んだ。
お父さんが、連れてかれちゃう。
正義のヒーローの象徴である、パトカーに乗せられる寸前、振り返ったお父さんは、
「ごめん」
と口を動かした気がした。
悲しいくらいに震えていて、小さな背中だった。
「っ…!やだ、!…やめて!!!!!」
パタン、とパトカーの扉が閉じる音が、異様に大きく感じられた。