私と彼、それに雪雛と多田幹は同じ5組だ。
 私達が教室に入ると、始業式だからなのか、もうすでにクラスメイトの大半が楽しげに話をしていた。 
 その光景を見て、『みんな去年はもっとギリギリに登校していたのに。』と思う。
 だが、彼は去年と同じように、みんなに挨拶をする。
 「はよー! お前ら今日は早えーな!」
するとみんなは、一斉にこっちに向き、
 「おはよう!」
と彼に挨拶し、バタバタと周りに集まってくる。
 これがこのクラスのいつもの光景。 彼はこのクラスの中心的存在であり、私達の学年一の人気者でもある。 お調子者だが、顔は良く、頭も良い(私の次に)。 スポーツ万能で、誰にでも分け隔てなく接しているから、女子から告白されることも度々ある(多田幹の次に)。
 私は、彼の周りに集まっているクラスメイトの隙間を縫って、窓際の自分の席に座る。
 すると、去年と同じ担任が教室に入ってきた。 みんなに席に着くよう、促す。 みんなが席に着くと、今日の始業式についてと、その後の日程についての話を始めた。 彼は近くの男子や女子とコソコソ話をしている。 これもいつもの風景。
 私は、彼らとは反対の、窓の外を見る。
 青い空が広がっている。 今日は日本晴れだ。 
 ふと思い出す。

 『あの日も、こういう気持ちのいい日だったな。』と。