十代にしか持ち得ない不思議な危うさを、
たぶん見える大人は少ない。
でも、見えてしまった。
その瞬間。
嘘のように、音が消えた。
乱れなく並ぶ人垣の横。
諦めたような微笑を浮かべ、
電車の近づく線路に、
彼女は羽ばたこうとした。
その腕を掴めたのは、
奇跡と言っていい。
強制的に夢から覚まされた紗良は、
痴漢でも睨みつけるかのように、
野暮な大人を振り返った。
「なっ…」
「そっちはだめだ」
遠すぎる。
すぐに相手が犯罪者ではないと、
気がついたらしい。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…