しかし、学校には来なくなった。 しつこ過ぎる電話には、 永遠と無言で返された。 何度かの家庭訪問では、 自分の部屋から出てさえ来なかった。 久しぶりに紗良の姿を見たのは、 今朝の混雑する駅のホーム。 彼女は一人、 整然とした大人の列から外れ、 先頭車両の乗り場に立っていた。 学校の最寄り駅で、 改札に向かわないとは。 どこに行くつもりなのだろうか。 友達でも待っているのかと、 通勤通学客に紛れ、 その横顔をしばらく眺めていた。 ふわりと羽でも生え、 飛んで行ってしまいそうだ。