「はい。はい。いいえ」

「…あれ?
紗良一番最初、なに聞いた?」

「忘れた。
一個ずつ聞けばいいんじゃね」

「だよね。彼女、いる?」

わざわざクーラーのない場所で、
景色をゆっくり楽しまないのはなぜだ。

悲しさに、肘付き身を乗り出した。

「いないと不味くね…?
おまえさっき、
カップルランチ頼んでなかった?」

「頼んだけれども」

運ばれて来たサラダ越しにも、
真昼の海は美しい。


あの人も、本当に美しかった。

不機嫌にパスタを口に運ぶ、
紗良の長い髪を耳にかける仕草が、
時を超えてダブる。