それから8ヶ月後、
俺はあの大きな瞳のナースに再会した。

でも、彼女は俺のことを覚えていないようで。
少しショック。

メンバーのタカトがコンサートのリハーサル中に倒れた時に往診に来てくれたのがあの日に俺を拾ってくれた彼女と、俺を診察して送ってくれたあの先生だった。
二人とも俺に気が付かず、懸命にタカトの診察をしている。

余裕が出来たら声をかけようと思ったけれど、そんなタイミングもなく。
そのまま彼女はタカトとスタッフについてホテルに行ってしまった。

深夜、木田川さんについて社長とヒロトと一緒にタカトの休むホテルのスイートルームに様子を見に行く。

部屋には彼女、水沢果菜さんがいるだけだった。タカトは寝室で眠りについているという。

「ねぇ、夕飯食べた?」
不意にヒロトが声をかける。

そういえば、忙しくてまだ食べてないんじゃないか?

「え?ああそういえばまだですね」

やっぱりだ。
俺はすぐに部屋の電話をとり、ルームサービスの手配をした。
彼女は今日も自分のことは後回しなんだな。

結局、彼女と話をする時間もなく木田川さんを残してホテルを後にした。

やっぱり俺のこと覚えていないらしい。
ハンパないがっかり感に襲われる。