「せっかくだから、挨拶回りをしておこう。結婚した後に行かなくて済む」

黙って頷く果菜の腰に手を回して西隼人の事務所の社長の元に向かった。そこを皮切りに俺の知り合いの俳優、女優、スポンサー企業や芸能関係者などと挨拶を交わしていく。

彼女の存在は概ね好意的に受け止められたように思う。
何と言っても果菜には悪意がない。
年齢、権力の有無に関わらず不必要な媚を売ることもなく横柄な態度もない。フラットに感じがいいのだ。

そして時に見せる恥じらった表情に男の庇護欲が疼く。
そんな視線に気付いた俺は早々に帰宅を決めた。

さっきから俺に向けてじゃない視線をあちこちから感じる。
しかも、男から。
果菜をこんなオオカミの巣窟に置いておくわけにいかない。


「果菜、もうそろそろ帰るぞ」

「いいんですか?まだパーティーが終わってないのに」

「もういい」

「帰る前に主賓や清美さん、ヒロトさんたちにご挨拶を・・・って貴くんってば」

話をしている途中の果菜の腰をグイグイと押して会場を出て行く。