「え?そうなの?」

そうなんだよ。果菜、ごめんね。
最近何度も俺の実家に連れて行ったのもこのため。

俺は実家で「貴(たか)」と呼ばれている。それというのも俺が生まれた後に結婚した父の妹の旦那さんが「タカヒトさん」というからだ。
タカトとタカヒト

叔父さんはタカヒトさん。
俺はタカと呼ばれ区別されていた。

そんな環境のところで過ごしていたら自然と果菜も俺のことを『貴くん』と呼び始め、さっきにように慌てると『貴!』と呼んだりするわけだ。


「清美社長も女の子たちに「あんたたち、調子に乗ってタカトに『貴』なんて呼んだらアイツにこの世界から抹消されかねないわよ。あの呼び方はタカトの家族だけに許された呼び方なんだから」って言ってたし」

「それに、今日の秋野さんのドレスの件もタカトと清美社長が仕組んだんでしょ?」

返事をしないでフッと笑うと、「やっぱりね。おおこわっ」とわざとらしく身震いする仕草をした。

「果菜ちゃん、今日の出席者の女の子たちはパステル調や花柄のファッションの子が多いと思わなかった?主役の秋野さんにかぶらないようにって配慮だったんだけど、逆にそれを利用したみたいなのよね。秋野さんは原色のワンピースか大柄の着物を着用しますってお触れが出てたの。
ホントに西さんや秋野さんとお付き合いのある方々には直前にヌードカラーの花柄ワンピース着用って連絡したみたい。
本当のことを知らされていないただのパーティー好きや仕事よりオトコ探しを目的にしてるような子たちは驚いたでしょうね、主役の大女優と衣装がモロ被り。だから会場内で堂々と歩き回ることが出来なくて隅で固まってたってわけ。

タカトのスピーチでさすがにマズいと思ったんじゃないかしらね。今日だけで二重三重に罠が仕掛けられてて、タカトや果菜ちゃんに何か仕掛けたら次はホントに潰されるって」