「本当に申し訳ありません。軽率でした。ご迷惑をおかけしました」
私も本当に丁寧に謝った。
「いいえ。ご無事で何よりですよ」
真島さんはどうやらやはり怒ってはいない。

「果菜さんも無事でよかったですよ。あなたに何かあったらタカトがどうなってしまうか。考えただけでゾッとします」
真島さんがため息をつきながら額に手をやるのを見て、ははっと心の中で笑ってしまう。
それ、先日私がやらかした行方不明の夜のことを思い出しているんですね。

連絡のつかない私を心配した貴くんが大騒ぎして地方にいて身動きとれない自分に変わって事務所スタッフを使ってあちこち一晩中私を探させていたらしい。
巻き込まれた事務所スタッフは木田川さんと青山君だけじゃなかっただろう。

「あの時はーーーいえ、あの時も本当にご迷惑をおかけしました」
ここは素直に謝らなくては。
「あれ以来スマホの電源は落としてませんから。ちゃんと連絡取れるようにしてあります」
真島さんはうんうんと頷いて「よろしく頼むよ。でもまあもう籍もいれたし簡単には逃げられないけど」と小声でニヤリと笑った。

お、意外に笑うと若く見える。
「逃げませんし、私も逃がしませんよ。今後ともよろしくお願いいたします」
私も笑顔でもう一度頭を下げた。