35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~

貴くんの友人関係が多岐にわたるのは知っていたけれど。

イベントプロデューサー、リゾートホテルの支配人、ジュエリー関係、雑貨店のバイヤー、ワイナリー経営者、アパレル業界人やら不動産屋、インテリアコーディネーター・・・いろいろな情報を手に入れるために親しい友人たちに集まってもらって毎晩のように話をしていたのだそう。
その度に、私のことを冷やかされて浮かれて深酒になっていたというが。

「口紅は?香水は?飲みの席に女性もいたんでしょう?」

「女はいない。それは断ってたし、口紅も香水も女が付けたんじゃないんだ」
疑いの目を向けている私に貴くんは苦笑する。

「ブライトライト化粧品の『夜空』ってシリーズ知ってるか?」
「あ、最近よく聞くかも。新しくブライトライト化粧品から出た日本人女性向けのブランドだよね?」

「そこの重役のひとりが俺の幼馴染で。『夜空』シリーズのモデルをやってみないかって化粧品ワンセット持ってきやがって。いらねえから持って帰れって押し問答してたらふたが外れてこぼれてあちこち付いちまったんだ」

モデル?化粧品?

「貴くんが口紅とか付けてモデルするの?」

「バカ、口紅付けるのは俺じゃない。メイクした果菜と俺がブランドのイメージモデルにって話だ」

まさかの私?
「え、ありえないよね」
「もちろんだ。これ以上果菜を見世物になんてしない」