「私が浮気でもしてると思った?自分がしてるから?そういうこと?」
「果菜っ!!」
突然の貴斗の大声にビクンっと身体が震えた。
なんで私が怒られるんだろう。我慢していたはずの心のリミッターがパチンっと外れる。
涙が一気に溢れてくる。
ポトンと私を後ろから羽交い絞めにしている貴斗の腕にも涙のしずくが落ちる。
それに気付いた貴斗の腕の力が弱まった。
「果菜、泣いてるのか?」
どんっと貴斗を突き飛ばすように腕の中から抜け出して手の甲で涙をぬぐった。
「泣いてない」
「泣いてるじゃないか」
「泣いてない!」下唇を噛みしめてグッと力を入れた。
涙など流したくはなかった。女の涙は武器だなんていう人もいるけれど、私にとって涙が武器とは思えない。
泣くなんて反則、泣いて済むと思うなと大昔に言われたことがあった。
それは恋愛がらみじゃなくて仕事中のことだったけれど。



