35階から落ちてきた恋 after story ～you are mine～

「電話だよ」
なかなか鳴りやまない着信音に冷めた視線を送って言うと貴斗はむすっとしたまま脱ぎ捨てたジャケットのポケットに入れたスマホを取り出し、画面を確認して出た。

「何だよ、今、忙しいんだけど」
口調から仕事の電話ではないらしい。
私は黙ってまた昨日の朝と同様にリビングを出てキッチンに向かうと冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出し一気に口に含んだ。

はあ。

まさか自分が浮気を疑われていたとは。
冷たい水を飲んだくらいじゃ頭は冷えない。責めたいのは私なのになぜか私が責められてる。

背後に貴斗の気配がした。

「またお出かけなの？」冷たくそう言うと、
「いや、断った」
言葉と同時に背中から抱きしめられる。

「俺が今また出掛けたら、お前またここから出て行こうとするだろう」

ふうん。なかなかよくご存じで。