35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~

「ステージに呼ばれる前にちょっとあの集団に挨拶してくる。果菜はヒロトの嫁さんから離れるなよ」

俺がすぐ近くで談笑しているグループを見やると、果菜は一瞬不安そうな顔をしたが「うん」と頷いた。
ごめん、社長も俺も離れてしまうと不安なんだろうな。わかってるけど、ちょっと我慢してくれ。

果菜から離れスーツ姿のグループの一人に声をかける。
「小山さん、お久しぶりです」

「ああ、タカトか。まさか君から声をかけてもらえるとはね」
驚いたように俺の顔を見るこの人は有名音楽雑誌の編集長。
以前、ギターに関するマニアックなコラムを書かせてもらったことがあるのだ。

「小山さんこそ、パーティーに出席されているとは驚きです。派手な場所は苦手ではなかったんですか?」
「そうなんだけど、配置転換で今度から男性誌に異動が決まってさ。今まで逃げてきたこともしないとなんだよね。あ、男性誌って言っても、エログロガセ系じゃないから。名刺渡しとくよ。またコラム頼みたいし」

「音楽以外のコラムなんて書けませんよ」
「じゃあ、インタビューとかどう?」
「考えておきます」
「正式にオファー出すから」
笑顔で「はい」と返していると、背後に香水の香りがすると同時に「タカトさぁん」と甘えた声が。

振り返ると胸元を大きく開けたミニワンピース姿の女。
誰だ、お前。

「ミクちゃん」
小山さんの隣にいた男がそう言うのだからミクちゃんというのだろう。