明るすぎず、暗すぎない照明の下でマルガリータをゆっくりと味わう。
日曜日の夜のBARはひと気が少なく長いカウンター席には離れた席にカップルが1組いるだけ。
テーブル席にもぽつりぽつりと数組いるだけで騒がしくもない。
年配のバーテンダーさんは私の構わないでという私のオーラを的確に読み取ってくれて話しかけてこない。

1人で飲むお酒ってこんなに味気ないものだったかな。
ふぅっと小さく息を吐いて腕時計に目を落とす。
ここ数日しっかり眠っていない。今夜はしっかり寝ないと明日は月曜日、一週間の始まりだ。
さすがに今週の仕事に響いてしまうのは社会人としてまずい。

「あれ?タカトの果菜さん?」

背後からかけられた声にビクッと震える。
振り返ると見覚えのある男性が立っていた。

「あ、広告代理店の?」
「そう。灯海堂広告の須川です。先日はお世話になりました」