店内に入った瞬間から、オレたちは高貴なコーヒーの香りに包まれる。
そして純平は、カウンターを担当しているという柚の位置からは見えない席を何も言わずに選んでくれた。
椅子に座ると、間もなく店員がメニューを聞きにやってくる。
「あ、純平くんいらっしゃい。今日は初めてのお友達だぁ」
「こいつ陸って言うんだ。よろしくな」
純平が常連なのは間違いないらしい。でもなんか大丈夫なのかなぁ(汗)
「陸、この子紗香ちゃん」
「あぁ、どうも」
「おい、キャップぐらい外して挨拶しろよ」
「えっ!」
それはムリムリ!
一応変装のつもりでかぶって来たんだから!
オレは顔の前で手の平を振って見せた。
「ごめんね紗香ちゃん、こいつ変な奴だから。あ、それと今日は柚ちゃんにオレが来てるって秘密ね」
「そうなの?うん、わかった〜」
純平がそう言うと、その紗香ちゃんとかいう子は不思議な顔をして戻っていった。
オレは心の中で純平に礼を言う。
まぁその後の言葉には、少し腹も立ったけどさ。
「柚ちゃんオレが来ると、絶対カウンターから出て挨拶に来てくれるからな。今日も来ちゃうとまずいだろ?」
「ふ〜ん…」

