そりゃあね……

イヤイヤ言いながら焦らされるのも、悪くはないけどさ。

素直に抱いてって言われた方が、男はどんだけラクか。




「結局陸は、私に魅力とか感じてないってことだよね」

「なんでそうなるんだって(汗」



後ろを向いたまま膨れる柚。

小さい背中にちょっとだけ寝癖の付いた髪は、今からでも全然構わないくらいオレにとっては魅力的。



「柚~…」



下心があるかないかは抜きにして、オレはそのままベッドの上で柚を抱きしめようと手を伸ばす。

すると色っぽく髪を掻き上げた柚は、スイ~っとオレの腕をすり抜けて。



「今日バイトあるからもう行く」

「え、そうなの?」



さっさとオレの部屋を出ようと身支度を始めた。

なんか膨れられたまま離れるっていうのも心苦しい感じがして、オレがなんとか柚の機嫌を直そうとオロオロしてると



「あ、そう言えばこの前のバイトの時さ、同じシフトで入ってた坂咲くんて子に生着替え見られて~。すごい恥ずかしかったんだよね。
でも今日もまた覗かれたらショックだなぁ。だって今日の下着って、まだ陸にも見せてない可愛い~デザインのやつなんだもん」

「柚?…(汗」

「やばい、遅刻しちゃ~うっ!」



柚からは相変わらずの小悪魔ぶりが健在する。



つまり昨日の夜に何もしなかった自分に、苦しみ後悔し続けろって仕打ちね。

柚の回りくどいやり方は、たまにならいいけど毎回だと結構面倒。

それでちょっとオレもムッとなって、素っ気なく返してやったのが失敗だっただろうか。



「はいはい、見られないように気を付けてね」



この時からオレと柚の関係は、非常に危ういものへと変わっていった。