手のひらでごしごし、と乱暴に目を擦り、しまいには鼻をすすったので、俺はポケットティッシュを差し出す。それを素直に受け取った優梨子は、遠慮なく鼻をかむ。


 そんなに、好きかよ。


 人を悪くいうことなんてたやすい。それに今、優梨子は弱っている。それにつけいることだって出来なくもない。

 けれどそんなことをして、なんになるのだろう。そう思ってしまう。
 自分でもびっくりするくらい、こんなことを思うと優梨子のことが好きなんだろうなと思う。


 優梨子は水を一杯のんで、深く息をすった。



「ちゃんと言いたいこと言ってくる」

「そうそう。浮気男に言いたいこといってこい」



 あああああ。これって別れる結果か?それとも復活か?


 とっちでもなんだか俺はこの位置が変わらないような気がしていた。

 多分、優梨子からみて俺は、恋愛対象外なのかもしれない。それはそれで残念すぎる。でも、あれだ。いつかと思えば俺だって頑張れるだろう。
 まだ復活するとは限らないし、別れて落ち着いたら、告白でもなんでもすりゃいい。


 二人で会計を済ませると、優梨子は「じゃ」といって自転車にまたがっていく。
 ありがとう、という声をはっきり聞こえたけど、俺は複雑だ。