アイスクリームをすくってなげやりに頬張る優梨子の目が、少しずつ潤んできているのには気がついたが触れない。
 きっと、優梨子だって我慢している。俺の前で、人前で泣かないように。


 机に無造作におかれている携帯が目にはいる。連絡でも待っているのだろうか。
 ああ、やめとけ。頼むからさ。



「携帯ね、二個持ちだったのよ。ずるいよね。私のときとで使い分けてるから、どうりで気がつかないわけだ」

「で、大喧嘩したと」



 ありきたりな展開だな。

 ありきたりだけど、本人にとって重大な問題であるし、俺にとっても真剣そのものだ。彼氏がいることを知っていて、俺はこの位置を利用して、そばにいる。
 そして、ひっそりと片思いしているのだ。




「いいたいこと、ちゃんといったのか」

「…半分は」

「全部言ってすっきりしてから、考えた方がいいんじゃねえの? 復活するにも別れるにせよ、さ」




 大喧嘩して、出てきたという優梨子の表情はさらに暗くなる。

 やべ、俺まずったか。