Collapse mind


もちろん、春くんはちゃんと男の子だと、理解していた。でも、華奢な細い体に、こんな強い力を持っていたなんて、想像も出来なかった。私なんかが、到底振り払えないと主張するように。


「これで分かった?俺は、男だってこと」


耳のすぐ横で言われて、息遣いや声がダイレクトに入ってきた。ぞわりと鳥肌が立つ。密着した体から感じる春くんの生暖かい体温に、どろどろと溶かされそうだった。こんな経験は初めてで、頭は既に爆発寸前。


ブルブルと震える足を奮い立たせて、今ある全部の力を使って春くんの胸を強く押した。案外簡単に離されて、無駄な力を込めすぎたせいか、後ろにつんのめって危うく倒れそうになった。


色んな体力を消耗したせいで、もう力が残ってない。オマケに手も震えてきて、そろそろ限界だ。


今まで起こった出来事に頭も体もついていかなくて、心臓が痛い。苦しい。途端に目頭が熱くなって、じわじわと膜が張る。目の前には、無表情でこっちを見つめる春くんの姿。