Collapse mind


ついさっきまで一緒に笑いあっていた、春くんのあの優しい面影は、一切ない。私は、春くんの全てを知っていた気でいた。長い間一緒にいた筈なのに、私の知らない春くんは、全てを呆気なく崩壊させる。


視界がぼやぼやと揺れ始めて、抱えきれなくなった涙が、ポロポロと落ちた。春くんの前で泣いたのは、初めてじゃない。私の泣き顔だって、もうとっくに知られている。


でも、何故か泣いてる所を見られたくなくて、下を向いた瞬間、黒いローファーが突然視界に現れ、影が落ちてきた。


かと思いきや、顎を掴まれて無理矢理上に向かさせる。ぼやけた視点を定めれば、目の前には春くんの綺麗な整った顔。


息をのむ。逃げないと。咄嗟に頭がそう判断した。なのに、絡まった視線から1ミリも目が反らせない。


顎を掴んでいた手がゆっくりと頬に伸びて、涙を優しく拭った。徐々に顔が近づきて来て、鼻と鼻がくっつく距離まで接近し、咄嗟に息を止めた。


キス、される。