Collapse mind


彩春、と耳元で優しく囁かれて、すぐそばにいるのを感じた。


硬い胸版が目の前に広がって、僅かに感じる生暖かい体温。そして背中に腕が廻っているのに気付いた時、私は今、抱き締められているんだという事が分かった。


まるで魔法をかけられたみたいに、体が固まって動かない。春くんとこんなに接近した事はないし、ましてや男の人に抱き締められた経験だってない。硬く広い胸版と体温を直接感じて、体が熱く燃え上がり出した。


やめて、と腕を伸ばそうとした時、更に強く抱きしめられた。背中に回っていた腕が上り、首筋まである髪の毛を柔らかく撫でられる。思わず息をのんだ。


「その大切な人、は、友達としてって事でしょ?悪いけど、友達なんてしょぼい関係で、終わらせられない」


''しょぼい関係''春くんが発したその言葉が、頭の中で何度もリピートされ、脳を強く叩く。


酷い。春くんの口から、私たちの関係を否定する言葉を、聞きたくなかった。まるで心臓を鷲掴みにされたように、酷く痛む。


「っ離して!!!」