危険な警戒音が頭に鳴り響く。それでも必死に言葉を探して、良い逃げ道を探した。とりあえずさらっと流して違う話題にしよう。そう思って、薄く口を開いたその時。
「彩春が、好き」
明らかな告白だった。今度は、冗談だとは思えなかった。決して自意識過剰な訳じゃない。ただ、今まで見た事のない、ひどく真剣な表情。強い意思を持った瞳。春くんから醸し出される雰囲気が、冗談にさせてくれなかった。
さっきとは違う、もっと深い胸の奥が、ドクドクと鼓動を鳴らす。
逃げられない。正常に動かない頭の片隅で、ぼんやりと思った。
幸せを感じる事は沢山あったように見えて、実は凄く珍しくて貴重な事だ。幸せを感じた事は覚えているけど、そこ瞬間の事はきっといつか忘れてしまう。
そんな思い出を、一つ残さず覚えていられる機能が頭にあればいいのに。今そんなことばかりが、頭に離れて消えないのは何故だろう。
春くんが口を開けて笑った時、口の端から覗く小さい八重歯が大好き。花がパッと咲いたみたいに、キラキラした満面の笑みを見ると、私までつられて笑顔になれる。
