「熾音、帰るぞ」



小さな窓からオレンジ色の光が差し込む日暮れ。

女子更衣室のドアの向こうから自分を呼ぶ声がした。



「イケメン翔くんちょっと待って!」

「口動かしてる暇あるなら早く準備しろ」

「待ってって言わなかったら置いて帰っちゃう癖に!」



向こう側にいる男性と大声で会話をしながらパーカーに腕を通す。

ドアを開けるとそこに立っていたのはポッキーを食べている翔と遥太だった。



「1人増えてる」

「嬉しい癖にー」

「自惚れ野郎か」

「翔!熾音ちゃんが虐めてくる!」

「いつもの事だろ」



2人共酷い!と身長180cm近くの大男が嘘泣きをする。

それに対して私と翔は無視をして玄関へ進んだ。ちゃんと着いてくるのを知ってるから。これも『いつもの事』。

私達はそんな風に『いつもの事』だなんて言い合える幼稚園からの付き合い、所謂幼馴染である。