それから内野先生が教室に大量の資料を持ってきて、職員会議で使われる資料を順番通りにして、ホッチキスで留めるようにと言われた。
それだけいうと内野先生はすぐに教室を出て行ってしまい、結局また黒瀬と二人きり。
…なんだか気まずい、
「…悪かったな。」
私と黒瀬で並んでホッチキスを留める中、再び沈黙を破ったのは黒瀬。
「え?」
「お前、俺のこと嫌いなんだろ。
…嫌いな奴と二人きりで居残りなんてさせて悪かったな。」
そう言われてドキッと心臓が嫌な音を立てる。
下を向いて作業をするなか、黒瀬の横顔を覗くと黒い瞳が揺れているような気がした。
「凛ちゃんとの話聞いてたんだ。」
「…聞こえたんだよ。」
力なくそう呟く黒瀬は、黒瀬じゃないみたいだった。
もう両手に持っている資料のことなんてすっかり意識の範囲から無くなった。
「………」
私はもういつもと違いすぎる黒瀬の雰囲気にどうすればいいのか分からなくなってしまった。



