名前で呼んでよ、黒瀬くん!【完】



そんなこんな考えていたらあっという間に放課後になって、教室には夕日が差し込んでいた。


「じゃあ今日はこれで終わり!あ、新垣と黒瀬は居残りだから教室残れよー」



なんてとても憂鬱な号令がかかり、クラスメート達は続々と帰っていってしまう。


内野先生は私たちにしてもらう資料とやらを取りに行くと言って教室を出ていった。




教室に残っているのは黒瀬と私だけ。





そういえば昼休みが終わってから黒瀬から話しかけられてないな。



…まあ五限も六限も爆睡してたから当たり前か。


チラッと横目でとなりに座る黒瀬を見るけれど、前を向いてじっとしている。




…いつもなら絶対に絡んでくるのに。珍しい。



…今日は何も言わないんだ。



「…俺のこと見過ぎ、」


沈黙の中、黒瀬がそう呟いた。


その言葉にハッとして、黒瀬から急いで目線を逸らす。


「べべ別に見てないしっ!」


「…あっそ。」


そう言って再び前を向いた黒瀬。表情はびっくりするくらいの無表情。



え?それだけ?


もっと突っかかってこない黒瀬に違和感を覚える。