名前で呼んでよ、黒瀬くん!【完】



「泣くなよ…」



泣いている私を目の前にあからさまに戸惑っている黒瀬。



私の目からこぼれ落ちる涙を、優しく親指で拭う黒瀬。




「っ、」


ずるいよ。


こんな時に優しい顔をして、見つめるなんて。
諦められなくなるよ。



「彼女、っいるのにそう、いうことしないでっ、」



そう言って黒瀬の手を払い除ける。



その時の黒瀬の傷ついた顔に、胸が痛む。




「は?…彼女なんていねえよ。」



「…嘘だ。告白された『さとみさん』がいるじゃない。」



「…、さとみはただの幼なじみで、告白も断った。」




『さとみ』と黒瀬が発した名前に、あからさまに心臓が反応して、ふつふつと嫉妬の渦が広がるのがわかる。




「でもショッピングモールいたって、」



「あれはさとみの兄弟も他にいたし、渡はたまたま二人で並んでるところだけ見たんだろ。」



…そうだったんだ。